メタルマックスの作り方 〜はじめに〜

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 メタルマックスというゲームをご存じでしょうか?
 1991年にファミリーコンピュータ用ソフトとして第一作が登場。93年、スーパーファミコンにて第二作、メタルマックス2が。95年には、1がスーパーファミコンにリメイクされ、メタルマックスリターンズとして発売されました。2000年には、ドリームキャストにて続編メタルマックス ワイルドアイズが発売される予定でしたが、開発は停止中。2003年の一月現在までに発売されたシリーズは、三本に留まっています。

 荒廃した近未来を舞台に、戦車に乗って戦うRPGというインパクトは、このゲームに出会った子どもたちの心を掴みました。その数は決して多くはありませんでしたが、魅力的な登場人物と、それらの人々が言い放つセリフ、あって無きがごとしの破天荒なストーリーの虜になりました。冒険を盛り上げる素晴らしい音楽に聴き惚れました。

 このページでは、どうしてそれほどまでにファンを引きつけるのか。そして、このゲームのどこにファンがのめり込むのかを、ゲーム内容の分析という切り口で考察します。この一風変わったゲームのファンを一人でも増やしたいという思いを込めて。

 そうそう、2003年春、ゲームボーイアドバンスにて、メタルマックス2改(仮)とメタルマックスリターンズ改(仮)が発売される予定です。興味をお持ちになった方は、どうぞお買い求め下さいませ。


メタルマックスの作り方 1 〜主人公という人(MM1/MMR)〜

 さて、これから先は、ある程度ネタバレとなってしまう可能性を秘めています。明示しないように気を付けますが、万一「おいおい」という内容を含んでいたら、こっそりと教えてくださいな。

 このシリーズの主人公は、決して選ばれた人間でもなければ、何らかの使命を帯びた者でもありません。その世界にいた普通の人間です。
 特に、メタルマックス1、リターンズの主人公は、戦車を駆ってモンスターを倒す賞金稼ぎに憧れるだけの少年です。平和な町で、修理工の父、家を切り盛りする姉と一緒に暮らしていました。荒くれ者が幅を利かせ、怪物が跋扈するこの世界では、非常に恵まれた環境と言えるでしょう。彼には、雨漏りのしない家に住み、温かい家庭があり、日々の糧を得るための家業もあったのですから。

 メタルマックスシリーズの主人公……ここでは、仮に「はんた」という名で呼ぶことにします。実際にゲームをやる方は、ご自分の好きな名前を付けてあげて下さい。

 メタルマックス1、リターンズのはんたは、モンスターハンターになりたいと父に告白し、そして勘当されます。父親にしてみれば、恵まれた環境で育ててきた息子が、わざわざアウトローな道を選ぶのが許せなかったのでしょう。
 かくしてはんたは、夢を叶えるためにも、生きていくためにも、旅に出ざるを得なくなるわけです。彼にとって幸運だったのは、彼の故郷であるリオラド周辺が非常に安全な地域であったということ。そして、町のすぐ近くに、戦車が埋まっているのではないかと噂される場所があったことです。これが、彼が主人公になり得た理由でしょう。


メタルマックスの作り方 2 〜主人公という人(MM2)〜

 メタルマックス2の主人公は、1やリターンズに比べると旅立つ必然性を持っています。彼は明確な使命を自らに課していますから。すなわち、育ての親マリアの復讐です。

 育ての親……そう、実母ではありません。2のはんたは、戦場で拾われた子だからです。普通なら、本当の親をストーリー中に登場させ、感動の対面を演出したくなるところです。生みの親を目の前にしても、育ての親の復讐をやり遂げたいと告げるはんた、これで感動のシーンができあがります。
 しかし、このゲームには、実の親など一切登場しません。影も形も気配さえ見せません。おそらく、実の親が死んでしまうのはさすがに重すぎるという考えがあったのでしょう。賞金稼ぎに拾われたことにすれば、いつ命を落とすか分からない身の上です。多少ドライな考え方を教えているだろうし、なにより必要以上に感傷的な演出も要らないんじゃないか。推測ですが、多分このような考えがあったのではないでしょうか。

 演出ということに関しては、このシリーズは本当に無欲です。キャラの個性を作るのに長大なイベントシーンや、会話の応酬を用いていないのです。マリアの死をあっさりと描き流し、忘れかけたところへマリアゆかりの品物をこっそり置いておくゲームですから。これがまた、見落としやすいところにあるんだわ。
 基本的に、プレイヤーが操作する「はんた」を、強制的に動かされることがありません。ベルトコンベアーに乗ったときは勝手に運ばれてしまいますが、本当にそんな程度です。ストーリーの段で後述しますが、このシリーズは、キャラが持っているだろう意志を押しつけようというところが本当に少ないです。やりたいことをやりたいだけやればいいゲーム、それを許してくれる主人公のはんた。個性はプレイヤーが与えるものだと徹底されています。


メタルマックスの作り方 3 〜あって無きがごとしのストーリー〜

 メタルマックスには、他のRPGのようなストーリーが存在しません。初期のドラゴンクエストを想像していただければいいかと思います。主人公は、旅をする目的を持ってはいるものの、旅の途中で起承転結に基づいたストーリーが展開することはありません。ちなみに、プロデューサーの宮岡さんは、ドラゴンクエストに関わっていた方。「ゆうていみやおうきむこう…」の宮王さんです。なんか納得。

 一般に、RPGのストーリーというのは、プレイヤーの移動できる先をコントロールし、イベントを少しずつ見せることで展開されていきます。ですが、メタルマックスにはそれが数箇所しかありません。

 まず、行く手を遮る中ボスというのがいません。倒さなければいけない強大な相手は、各作品で一体、二体ぐらいでしょうかね。基本的に、賞金首と呼ばれるモンスターが、中ボスの位置に当てはまるんだろうと思いますが、それらには賞金がかけられています。そんな相手が、わざわざ賞金稼ぎの前に現れるはずがありませんね。当然、はんた達も賞金首のいる場所に行く必要はありません。では、何のためにわざわざ倒すのか? 決まっています、お金と、そして名声のためです。
 賞金首は、はんたの行く手を遮ることはしません。お尋ね者たちも彼らなりの日常を過ごしています。たまたま、お互いが出会ってしまい、片方が賞金稼ぎ、もう片方が賞金首だっただけ。世界の誰も、世界を操ることはできません。

 はんたの旅の目的は、強いモンスターハンターになることや、育ての親の仇を討つことです。その目的以外の全ての事柄、相手は、一番最後に控えているボスでさえ、たまたまそこにいた邪魔な存在でしかありません。メタルマックスの中では、主人公は一度も最後の敵を倒さなければいけないという立場には立っていないのです。いたから倒す、いたってシンプルですね。

 そうそう、このゲームでは、エンディングを迎えるのに最後の敵を倒す必要はありません。旅の終わりは、モンスターハンターを辞めるときです。そのタイミングは、プレイヤーの意思に委ねられています。はんたの旅の終わりを決めるのは、はんた自身、イコールあなたです。自分が目標を達成できたとき、目先の目的よりも大きなものを得たとき、戦車を降りましょう。全ての判断はプレイヤーに委ねられています。


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